喜多川歌麿 浮世絵美人画「鳳凰・松葉楼松風（額入り）」

喜多川歌麿 浮世絵美人画「鳳凰・松葉楼松風（額入り）」の詳細

第六巻の「鳳凰 松葉楼若紫」の解説でも述べたように、本図の江崎屋版では、唯單に「松葉屋粧ひ」と題されている。
また本図と同じ伊勢長から出版された同一の構図の作品には「哥川」と記される。
同じ伊勢長から発行された同一構図でありながら、一つの三枚続では、中央が「中川」で、「松風」は左の図となっている。

それに対して本図の場合は、「松風」が中央に、「哥川」は右の図に描かれている。
こうした三枚揃いの場合、人気第一の女性が中央に描かれているので、この二種は、実際の人気による差違による作品といえる。

豪華な蒔絵の煙草盆を前に置き、細柄の長煙管を重たそうに持ち、左手でうちかけの襟をつまんだ松風の姿は、松葉楼の人気遊女としての気品ともいえるものがあふれるといえよう。

前に大きく結んだ帯の誇張された描写がそうした気分を盛り上げる。この作品は筆者歌麿の最晩年の作とされる。