この作品は「當世好物八契」は渓斎英泉による美人画シリーズの一つです。 同名のシリーズが喜多川歌麿の享和期にも存在しており、歌麿の作品は町家の女性風俗をテーマとしていました。 一方、英泉の本シリーズでは、「羽子板を持つ町家の箱入り娘」「座敷着の芸者」、そして本図の「花魁」と、女性のさまざまな階層や立場を描いている点が特徴です。
この図は英泉の初期作品に属しており、後年のようなデカダンス的な女性美や、官能的で強烈な個性美はまだ控えめです。 顔立ちなども師・菊川英山の画風に近いですが、目元に細かく描かれたまつげや、京紅を用いた独特のメイクによる唇の表現など、繊細な技法が見られます。
当時、最高水準に達していた彫師・摺師の技術を駆使しながら、英泉ならではの現実的な女性美を追求した作品といえるでしょう。